📊 事実
調査の経緯と対象
- 日本製鉄、日本冶金工業、ナス鋼帯、日本金属の4社から、中華人民共和国産及び台湾等からのニッケル系ステンレス冷延鋼帯及び冷延鋼板に対する不当廉売関税課税の求めが令和7年5月12日に提出されたソース7。
- 調査開始告示は令和7年7月22日に行われ、調査対象期間は令和6年1月1日から同年12月31日までと定められたソース6 ソース7 ソース9。
- 令和8年6月19日、財務省と経済産業省は不当廉売がされた貨物の輸入の事実及び本邦産業に与える実質的な損害等の事実を推定する仮の決定を行ったソース7。
- 今後、WTO協定及び関係国内法令に基づいて引き続き調査が実施されるソース7。
不当廉売の具体的な状況
- 中華人民共和国産供給者における不当廉売差額率は、Shanxi Taigangが33.29%、PZSSが45.32%であったソース9。
- 台湾産供給者では、YUSCOの不当廉売差額率が3.86%、Walsinは20.71%と算出されたソース1。
- 調査対象貨物の正常価格と不当廉売価格との差額は2%を超えており、僅少ではないと判断されたソース2。
- 令和6年時点の不当廉売差額率は40.0%であり、国内販売価格差率は調査期間を通じて40-60%で推移したソース3。
- 調査対象貨物の輸入価格は、調査対象期間を通じて本邦産よりも50-80%安い水準であったソース5。
日本産業への損害の実態
- 本邦でニッケル系ステンレス冷延鋼帯及び冷延鋼板を生産しているのは、日本製鉄、日本冶金工業、ナス鋼帯など11社であるソース1。
- 中華人民共和国及び台湾からの調査対象貨物の輸入量は、令和4年の106,074MTから令和6年の123,413MTへ増加したソース5。
- 調査対象貨物の市場占拠率は、令和6年に対前年比で25ポイント上昇しソース2、調査対象期間全体では32ポイントの増加が見られたソース3 ソース5。
- 調査対象貨物の販売価格は、本邦産同種の貨物の販売価格を常に下回っていたソース2。
- 本邦の産業の生産高は令和5年に対前年比25ポイント減少したが、令和6年には6ポイント増加に転じたソース2。
- 本邦産同種の貨物の稼働率は、令和5年に前年比24ポイント下落し、調査対象期間全体では15ポイントの下落となったソース3。
- 本邦産同種の貨物の国内販売量は、令和4年から令和6年にかけて20ポイント減少したソース3 ソース5。
- 第三国からの輸入は調査対象期間中に市場において競合しておらず、本邦産業に損害を与えた要因ではないと判断されたソース5。
- 不当廉売が本邦の産業に実質的な損害を与えたと推定されたソース7 ソース9。
中華人民共和国の産業政策
- 中華人民共和国憲法第6条は社会主義公有制を基盤とする経済体制を規定しているソース10。
- 第13次五カ年計画(2016-2020年)では、政府による価格形成への干渉を減らす方針が示されたソース10。
- 第14次五カ年計画(2021-2025年)では、党による全面的指導を堅持することが明記されているソース10。
💡 分析・洞察
- 中華人民共和国および台湾からのニッケル系ステンレス冷延鋼帯の不当廉売は、日本の基幹産業である鉄鋼業界の競争力と収益性を直接的に毀損している。国内生産者11社の稼働率や販売量の顕著な減少は、国内市場の健全な価格形成を歪め、経済安全保障上の重大な脆弱性を生じさせる。
- 中華人民共和国の五カ年計画に見られる国家主導型経済体制は、国際的な市場原理から逸脱した過剰生産を誘発し、それが不当廉売という形で日本産業に押し付けられている構造が明確である。この貿易慣行は、日本の他の主要製造業においても同様の市場攪乱と技術流出のリスクを拡大させ、中長期的な国益を損なう可能性が高い。
⚠️ 課題・リスク
- 不当廉売関税が導入された場合でも、中華人民共和国が価格競争力に劣る同製品の輸出を継続するか、あるいは他の関連品目において同様の不公正貿易慣行を拡大する可能性がある。これにより、国内産業の恒常的な競争圧力が増大し、技術開発投資の停滞や雇用維持の困難といった実質的な脅威が継続する。
- 不当廉売関税の導入は、日本の国内産業を保護する一方で、中華人民共和国からの報復措置や外交関係の緊張を招くリスクを内包する。この状況は、他の貿易分野における交渉力低下や、サプライチェーンの再編に伴う国内企業の追加的なコスト負担を引き起こし、最終的に国民経済に間接的な悪影響を及ぼす可能性がある。
主な情報源: 財務省note

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