📊 事実
日米加海上保安機関合同訓練の実施
- 令和8年5月21日にカナダ(ビクトリア)沖合で、海上保安庁練習船「いつくしま」、米国沿岸警備隊の巡視船、カナダ沿岸警備隊の巡視船「Tanu」が参加し、合同捜索救助訓練が実施されたソース1 ソース5。
- 訓練内容は転覆したヨットの乗船者を捜索救助するものであり、連携手法や技術の共有が図られたソース1 ソース5。
- 本訓練は海上保安庁、米国沿岸警備隊、カナダ沿岸警備隊の3機関によって行われ、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現に向けた協力推進が目的とされているソース1 ソース5。
- 海上保安庁は、米国沿岸警備隊との共同取組「SAPPHIRE」を通じて、カナダ沿岸警備隊との協力覚書に基づく取組を推進する方針であるソース5。
日本の海洋安全保障に係る多国間・二国間協力の推進
- 令和8年3月9日には、海上保安庁の瀬口良夫長官と米国沿岸警備隊のケビン・ランディ長官が日米海上保安機関長官級会合を米国沿岸警備隊本庁で開催し、FOIP実現に向けた法の支配に基づく海洋秩序維持・強化の重要性を確認したソース3 ソース10。
- 日本は「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、法の支配、航行の自由、自由貿易等の普及・定着、経済的繁栄の追求、平和と安定の確保を推進しているソース7。
- 海上保安庁は、平成12年から北太平洋海上保安フォーラム(NPCGF)、平成16年からアジア海上保安機関長官級会合(HACGAM)、平成29年から世界海上保安機関長官級会合(CGGS)を開催しているソース7。
- NPCGFには日本、韓国、中国、ロシア、米国、カナダの主要6カ国が参加し、漁業取締や共同オペレーションなどの7つのワーキング・グループを持つソース8。
- HACGAMは2004年に日本で第1回会合が開催され、アジアの22カ国・1地域・2機関が参加し、捜索救助、海洋環境保全、海上不法活動の予防・取締り、人材育成、情報共有/合同訓練を主な分野とするソース4。
- 海上保安庁は「日米韓」3か国による初の合同訓練を実施し、「日米比」3か国間の洋上交流プログラムを推進しているソース7。
- 海上保安庁は、平成29年10月に発足した海上保安能力向上支援の専従部門「海上保安庁MCT」を令和6年度末までに23か国へ合計132回派遣し、オンライン研修や招へい研修も実施しているソース7 ソース9。
中国の海洋活動と日本の対応強化
- 尖閣諸島周辺海域では、ほぼ毎日、中国海警局に所属する船舶による活動が確認されているソース7。
- 令和6年には、尖閣諸島周辺の接続水域での中国海警局船舶の年間確認日数が過去最多を更新し、令和7年3月には領海侵入時間が過去最長を記録したソース7。
- 中国海警局の船舶は大型化・武装化が確認されており、領海に侵入し日本漁船に近づこうとする事案が繰り返し発生しているソース7。
- 東シナ海等の日本の排他的経済水域において、外国海洋調査船による同意を得ない調査活動や、大和堆周辺海域での外国漁船による違法操業も確認されているソース7。
- 海上保安庁は、令和4年12月の「海上保安能力強化に関する方針」に基づき、巡視船・航空機等の増強整備を進めており、令和6年度には大型巡視船3隻、大型ジェット機1機、中型ヘリコプター1機、大型練習船「いつくしま」が就役したソース7。
- 海上保安庁は、警察、自衛隊、外国海上保安機関等との連携・協力を強化しているソース7。
日本の防衛協力政策の転換
- 2026年5月、日本の防衛大臣小泉進次郎はインドネシアとフィリピンを訪問し、海洋安全保障に関する防衛協力強化の合意を締結、情報共有や防衛装備品の移転を進める方針を示したソース2。
- 日本は2023年に防衛輸出規則を改正し、完成品の致死性武器の輸出を許可しており、オーストラリアへ10億米ドル相当のMogami級フリゲートを供給する契約を結んだソース6。
- 日本は2023年に公式安全支援(OSA)を導入し、インド太平洋地域の国々に軍事装備を無償提供することを目指しているソース6。
💡 分析・洞察
- 日米加海上保安機関合同訓練は、FOIP戦略に不可欠な多国間協力の具体化であり、広大なインド太平洋における危機対応能力と相互運用性の向上に直結する。特に、法の支配に基づく海洋秩序維持の基盤を強化し、日本の国益を担保する。
- この訓練は、中国の海洋進出に対する集団的抑止力の強化を間接的に示唆する。海上保安機関間の連携深化は、既存の海洋安全保障フレームワークを補完し、有事の際の共同対応能力を向上させるための信頼醸成措置として機能する。
- 日本の防衛装備品輸出政策の転換や能力向上支援の拡大と合わせて、この訓練はインド太平洋地域における日本の安全保障上のコミットメントを明確にする。これにより、同盟国及び友好国との連携を深化させ、日本の周辺海域における安定化に寄与する。
⚠️ 課題・リスク
- 日米加合同訓練を含むFOIP構想に基づく連携強化は、中国の「核心的利益」に対する挑戦と認識され、東シナ海や南シナ海における緊張を高める潜在的リスクがある。これにより、中国海警局による尖閣諸島周辺での活動がさらにエスカレートし、偶発的な衝突の可能性が増大する。
- 多国間での連携強化は、各国の法執行機関間の管轄権、指揮系統、交戦規定(ROE)の相違に起因する調整コストを増加させる。これが有事の際の迅速かつ統一的な意思決定や行動を阻害する要因となり、かえって日本の治安維持活動に支障をきたす恐れがある。
- 北太平洋海上保安フォーラム(NPCGF)のように中国・ロシアがメンバーである既存の多国間枠組みにおいて、日米加の連携強化が政治的軋轢を生み、対話チャネルの機能不全を招く可能性がある。これにより、地域の共通課題(漁業取締、環境保全など)に対する協力関係が損なわれ、日本の海洋権益保護にも悪影響を及ぼしかねない。
主な情報源: ORF(オブザーバー・リサーチ財団) / 国土交通省 / The Diplomat / 海上保安庁

コメント