私、高市早苗でございます。
内外から、日本は大きな危機に直面しております。この巨大な危機を乗り切るために必要なものは、未来へのビジョンに変える力、そしてその危機(クライシス)に立ち向かえる強い政治です。また、方向性を示せる政治でございます。そして、揺るぎない土台の上に立った、安定した政治です。国民の皆様が待っておられるのは、それです。国民の皆様に「強い日本」を取り戻し、「愛する日本」を未来へとつなげていく。その思いで、私は再び挑戦を重ねてまいります。
2016年8月、当時の安倍晋三総理が、「日本は太平洋とインド洋、アジアとアフリカの交わるこの地を、力や威圧とは無縁で、自由と法の支配、市場経済を重んじる場として育て、豊かにするものになります」とおっしゃいました。そして日本が主導する「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想のもと、日本が指導したTPP11や日EU・EPAなどを中心に、その歩みを進めてまいりました。
私は、安全でなければ未来はない、そう考えています。
「日本をもう一度、世界のてっぺんへ」
その戦う志という思いを胸に、この場に立たせていただいております。今、日本の国力を強くしなければなりません。それは外交力であり、防衛力であり、経済力であり、技術力であり、情報力、そして全てを支える人材力でございます。これらの総合的な力を強くします。
やはり、防衛力の裏付けのない外交は弱いと感じることが度々ございました。また、情報力が弱いと防衛力を強めることもできません。他方、世界中が欲しがる技術を日本が持っていたならば、それは日本の不可欠性を高め、世界の平和を守ることにもつながってまいります。
そういうことで、私は何としても日本の国力を強くしていきたい、まあそんなふうに考えております。
強い経済の実現:経済成長の追求
先ほど、全てを支えるのは「人材力」だと申し上げましたが、同時にとても大事なのは「経済力」、強い経済です。私はあくまでも、どこまでも経済成長を追い求めてまいります。今やらなければ間に合いません。でも、今スタートすれば間に合います。日本には底力があるからです。
日本は先の対戦の荒廃の中から、驚くべきスピードで復興を遂げ、そして成長してきました。私は昭和一桁生まれの両親から、戦中戦後の混乱期がどんなに大変だったかという話を聞きました。そして、額に汗して働くことの尊さも聞いて育ってきました。
私は奈良県の、地方で大人になるまで育ちました。父はメーカーに勤務しており、母は奈良県警に勤務しており、ごくごく平凡な共働きの家庭でございました。今は亡き母の育児日記がございますけれども、昭和36年3月7日、「女の子誕生。内閣総理大臣は池田勇人」で始まるものでございます。前の年に就任された池田勇人総理は「所得倍増計画」を掲げ、日本はまさに高度経済成長期の真っ只中にありました。
私の家族は決して裕福な方ではありませんでしたけれども、それでも両親は懸命に働き、そして父は新しいもの好きだったものですから、ボーナスやお給料が出た日には、カラーテレビですとか、ステレオですとか、当時まだ発売されたばかりでむちゃくちゃ高かった電子レンジですとか、こういったものを次々に家電製品として買ってきました。まさに地方に住んでいても、一生懸命働けば生活が豊かになる、便利になる、そういうことを体感できた、明るく元気な時代でありました。
1973年、第一次石油ショックがありましたが、それまで高度経済成長期は続きました。その苦難の後も、日本人は勤勉に働き、貪欲に世界市場も開拓し、技術開発からアフターケアまで、「日本的なビジネスモデル」と言われた優れた製品やサービスで、経済大国として世界のてっぺんに立ちました。
1990年代以降、私たちはバブルの崩壊、そして長引くデフレ、またリーマンショックもあり、度重なる大災害、そしてコロナウイルス感染症と、様々な苦難に直面してまいりました。アベノミクスで確かに雇用は増え、株価も上がりました。でも現在の日本は、何とも言えないこの閉塞感の中にあります。
それでも大丈夫です。日本には世界共通の課題を解決できる技術力があります。そして大企業だけじゃなくて、地方のスタートアップや研究機関にも、夢を追いかけて使命感を持って寝る間も惜しんで一生懸命働く方々の「人材力」があります。日本経済は成長できます。私は成長させます。
私が最もやりたいこと:危機管理投資と成長投資
私が最もやりたいことは、大胆な「危機管理投資」と、そして「成長投資」です。この危機管理投資と成長投資で、暮らしの安全・安心の確保、そして強い経済、この両方を実現するということです。これが私の最もやりたいことでございます。
今や世界の潮流は、行き過ぎた緊縮財政ではなく、社会の課題解決に向けて官民が連携して投資を拡大する「責任ある積極財政」へと移行しています。だから、様々なリスクを最小化して先端技術を開花させるための戦略的な財政出動というものは、私たちの暮らしの安全・安心を確保するとともに、雇用と所得を増やし、消費マインドを改善し、税収が自然増に向かう、そういう強い経済を実現する砦です。そしてその恩恵は、未来の納税者に及びます。
私が実現したいこと、申し上げます。
第一に、生活の安全保障
今最も急がなくてはならないのは、物価高から暮らしと職場を守ることです。
- ガソリンと軽油の暫定税率を廃止していく取り組みとともに、地方財源も確保いたします。
- 人手不足の中でも就労時間調整の一因となっている**「年収の壁」を引き上げます**。これは働く意欲を阻害しない、そういう制度へと変えてまいります。
- 即効性のある対策として、自治体向けの重点支援交付金を拡充します。対象地域ごとの実情にあった支援を機動的に実施します。交付金の使途は自治体が決めるものですが、国は推奨メニューを示すことができます。例えば、賃上げ税制の恩恵を受けられない地方の中小・小規模事業者への賃上げ補助金ですとか、コスト高に苦しんでおられる農林水産業への支援なども盛り込みたいと思っております。
- 中低所得者の負担増、つまり逆進性の高い社会保険料を軽減して、給与収入に応じて手取りが増えるようにする「給付付き税額控除」という制度設計を進めてまいります。これは数年かかる取り組みにはなりますが、とても大切な取り組みです。
第二に、経済安全保障の強化と関連産業の育成
- 海外からの投資を厳格に審査する**「対日外国投資委員会」を設置**いたします。
- 経済安全保障に不可欠な成長分野、例えばAI、半導体、ペロブスカイト太陽電池、全固体電池、デジタル、量子、核融合、マテリアル、合成生物学、バイオ、航空宇宙、造船、創薬、先端医療、また送配電網や港湾、道路などについて、分野ごとの官民連携フレームワークを作り、積極的な投資を行います。
第三に、食料安全保障の確立
周囲を海に囲まれております我が国では、貿易の99.5%が海上輸送です。万が一、周辺有事でシーレーンが使えなくなってしまったら、また世界的な気候不順で絶対的な食料不足が発生してしまったら、それは私たちの生存に関わります。
私自身、岸田総裁の下で政調会長を務めておりました折に、自民党の政調会に「食料安全保障に関する検討委員会」を設置しました。その結果として昨年、農政の骨格ともいえる「食料・農業・農村基本法」が四半世紀ぶりに改正されることになりました。この基本法改正の初動の5年間、つまり今年度(令和7年度)から11年度までが「農業構造転換集中対策期間」とされています。ですから、この期間に大胆な集中投資を行って、全ての農地をフル活用できる環境を作ります。
さて、日本には**準天頂衛星「みちびき」**がございます。これは最高6cmと世界一の精度を誇る衛星です。このセンチメーター級の測位衛星と国産ドローンを活用して、秋田県では種籾の直播や農薬散布の実証事業が進んでいます。これにより、収穫期まで田んぼに入らなくて済むようになり、収量も田植えをした時と遜色ないレベルになってきていると聞いております。来年度に「みちびき」は7機体制になりますから、アメリカのGPSに頼らずとも中山間地域でも使え、苗を育てるコストも削減できるなど、新たな農業の形が見えてきています。
ただし、私の名前は「早苗」でございますので、やはり苗を育てて田植えをするという農業にも、大変な思い入れはございます。
この世界一の測位技術は、これから自動運転やロボット農機を使ったスマート農業にも使えますし、また、AI解析技術などで土壌の分析や水温管理を行い、農家の皆様の負担軽減に貢献できる時代になってきたと考えています。そして、日本のスタートアップが持つ世界最先端の技術、例えば完全閉鎖型植物工場や陸上養殖施設なども、さらに研究開発を重ね、国内外の市場に展開していかなければなりません。
また、全国の農林水産物や食品の輸出を拡大いたします。例えば、欧米諸国では小麦アレルギーの方が多いため、グルテンフリーよりもはるかに厳しい日本の**「ノングルテン」基準**を満たした米粉を加工し、世界各国に輸出していくことで、日本に富を呼び込みます。
第四に、エネルギー・資源安全保障の強化
これも世界の共通課題です。日本のエネルギー自給率は現在15.2%ですが、自給率が100%を超える国々においても、データセンターの増加や生成AIの登場により、消費電力量が急増している状況です。
私は、超円高時代に海外に出て行った日本企業の国内回帰を促すためにも、そして国内のものづくりをしっかりと守るためにも、特別高圧・高圧の電力を安価に安定的に供給できる対策を講ずる必要があると考えています。
- まずは安全確保を大前提とした原子力発電所の再稼働です。
- そして、シンプルで安全性の高い次世代革新炉の実装です。
- その次、2030年代には、ウランもプルトニウムも必要なく、高レベルの放射性廃棄物も出ない核融合(フュージョン)エネルギーの時代がやってきます。
化石燃料に頼って国富を流出させたり、資源国に頭を下げたりする外交を終わらせたい。何としても日本のエネルギー自給率を引き上げていきたい。できれば100%を目指していきたい、こう考えております。
また、私はこれ以上、私たちの美しい国土を外国製の太陽光パネルで埋め尽くすことには猛反対でございます。間もなく耐用年数を迎える初期型太陽光パネルの安全な廃棄も大きな課題です。今後は、従来のシリコンの100分の1の厚みで、薄くて曲がる**「ペロブスカイト太陽電池」**など、日本が優位性を持つ技術を展開していくことが大事です。
第五に、令和の国土強靭化対策
現在と未来の命を守る対策です。
- 国と自治体が共同でシミュレーションを行い、各地のリスクを点検して、事前防災に必要なハード・ソフトの整備をしなければなりません。
- 下水道の老朽化対策も深刻ですが、それよりも法定耐用年数が短い上水道の老朽化はさらに深刻です。法定耐用年数40年を超えている上水道管は現在約14万kmに及びます。最新の衛星技術やAI解析を活用しながら、いかに速やかに、効率的に老朽化対策を進めていくかが大事です。
- 首都機能のバックアップ体制を構築いたします。
第六に、サイバーセキュリティ対策の強化
私のライフワークでもあります。ようやく「アクティブ・サイバー・ディフェンス」の法整備にたどり着きましたが、高度化するサイバー攻撃や偽情報に対応できる高度な技術人材の育成が極めて重要です。これをしっかりとやりつつ、関連産業群を構築していきたいと考えております。
第七に、健康・医療安全保障の構築
- コスト高に応じた診療報酬・介護報酬の見直しや、人材育成支援が大事です。
- **「攻めの予防医療」**を推進することで、医療費の適正化と健康寿命の延伸を共に実現してまいります。
- ワクチンや医薬品については、経済安全保障の観点からも、原材料生産、ノウハウ、そして人材を日本国内で完結できる体制を構築してまいります。
- 再生・細胞医療、遺伝子治療、革新的ながん治療、認知症治療などの研究開発をしっかりと推進してまいります。
以上の危機管理投資は、先手を打って取り組めば大きな成長投資になります。さらに、日本に強みがある技術分野について、国際競争力強化や人材力育成に関する戦略的な支援を行ってまいります。地方ごとに様々な成長分野の産業クラスターを設置し、世界をリードする技術やビジネスが地方から生まれていく、そういう姿を作っていきたいと考えています。
財政健全化と成長について
私は、財政健全化が必要だということを一度も否定したことはございません。それは健康維持が大事なことと同じです。しかし、経済において大切なことは**「成長すること」**であって、財政健全化そのものが目的ではありません。
財務省には、ぜひとも「これをやったら成長します。経済規模が10年で倍になりますよ」というぐらいのマスタープランを示していただきたい。財務省には、国民全体の奉仕者として、私たちの幸せと国の成長を願って働く優秀な方々が大勢おられます。だからこそ、財務省には本気を出していただきたい。日本経済を元気よく伸ばして、それで税収がみるみる増えて、財政状況も良くなる。そういうプランを出して欲しいと願っています。もちろん、私も先頭に立ちます。
私は責任ある積極財政でワイズスペンディング(賢い支出)を行い、日本経済を成長させてまいります。それが王道だと考えていますし、それこそが多くの国民の皆様に夢と希望を与える道だと確信しております。
人材力と多様な働き方の支援
これらの取り組みの全てを支えるのは「人材力」でございます。私自身、人生で3回の看護や介護を経験しました。それだけに、介護や育児、お子さんの不登校などによって離職される方を減らしたいという思いが本当に強くなっています。キャリアを諦めなくても済むような社会をつくりたいと願っています。
- 家政士を国家資格化することを前提に、ベビーシッターや家事支援サービスの利用代金の一部を税額控除する制度設計を検討します。
- 企業主導型の学童保育事業を創設したいと考えています。
- 企業内の保育施設が病児保育を実施する場合には、法人税の減税を考えてまいります。
また、主に女性が元気に長く働くために、将来にわたってホルモンバランスの変化を受けやすい女性の健康をサポートするための政策も推進します。私自身も40代前半から更年期障害が始まり、関節リウマチを発症して人工関節を入れるという経験をしました。私と同じような思いをする方をこれ以上増やしたくない。全ての医師が更年期の女性の不調について知識を持ち、女性自身もそれを知っていただきたい。ようやく今年度から「女性の健康ナショナルセンター」機能の構築が開始されました。これを大いに応援していきます。
防衛力と外交力の強化
日本の平和を守ることは、当然のことであり、重要なことです。
- 日本にとってはアメリカが唯一の同盟国です。しかし、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)には、「日本は、日本の国民及び領域の防衛を引き続き主体的に実施し、日本に対する武力攻撃を極力早期に排除するため、直ちに行動する」とあります。主体的に日本を守るのは自衛隊だということを、私たちは忘れてはなりません。
- 宇宙、サイバー、電磁波といった新たな領域や、極超音速兵器など、新たな戦争の様相に対応できる体制を整備し、自衛隊員の方々の待遇改善も進めなければなりません。
- 私が特に注力したいのは、海底ケーブルと衛星通信網の防御です。これらが同時に破壊された場合、日本の防衛は成り立ちません。宇宙空間の安全保障においても、日本のスタートアップが持つ世界一の技術を活用してまいります。
- 日米同盟の強化に加え、準同盟国とも言えるイギリス、イタリア、オーストラリアなどとの関係・協力を深めてまいります。現在、日英伊で共同開発している次期戦闘機は、3か国が最高レベルの技術と情報を持ち寄り、数十年単位での非常に強い絆を生み出します。この開発から、私たちの生活を豊かで便利にする新しい技術と産業が生まれることを期待しています。
- 主要駅や大規模建築物の建設時に、地下シェルターの設置を義務付ける法案の検討も進めなければなりません。
外交では、FOIPの進化による同志国との連携強化、CPTPPの加盟国拡大、日EU・EPAの活用など、主体的に多角的な経済外交を展開します。そして何よりも、深刻な課題である北朝鮮による拉致問題です。あらゆる手段を通じて、全ての拉致被害者の一括帰国に向けて、心血を注いでまいります。
これらの任務を遂行するため、インテリジェンス関係省庁の司令塔としての**「国家情報局」の設置**を目指します。
自民党総裁を目指すものとして
自由民主党の総裁を目指す者として、ぜひとも申し上げなければならないことがございます。
- 第一に、時代の要請に応えられる日本国憲法の改正をすること。
- 第二に、男系の皇統をお守りするために、皇室典範を改正することでございます。 126代も続いてきた私たちの皇室は、世界のどこにも例のない、日本にしかない大切な宝物でございます。
そして、自民党を立て直さなければなりません。国民の皆様から信頼していただける自民党に、頼れる自民党に、夢と希望を配って実現できる自民党に、そして我が国の伝統と歴史に誇りを持って進んでいく自民党に、私、高市早苗は作り上げてまいります。全世代の総力を結集し、全ての世代の方々のお声に応えられる、そういう自民党を作ります。
結び
昨年、この会見の場で、ある映画から私が受け止めた言葉をお伝えしました。終戦間際の鹿児島に、現代を生きる女子高生がタイムスリップし、まもなく特攻に出撃する青年と恋に落ちる話です。彼女は、未来から来たので日本が負けることを知っています。現代に戻った彼女は気づきます。
「私たちが生きている今、それは、誰かが命がけで守ろうとした未来だった」
この言葉は本当に重いです。その誰かが守ってくれた未来を、今、私たちは生きています。だからこそ、この日本列島を強く、豊かにして、安全な国にして、次の世代に贈る責任があると思います。
夜遅く眠りにつく時に、私が死んで半世紀ほど経った頃、日本はどうなっているだろうかと心配になります。そう考えると、いても立ってもいられない気持ちになります。だから、「今」、私たちが果たすべき使命がある。「今」やらなければいけない。そう自分に言い聞かせている毎日でございます。
日本とは、”The Land of the Rising Sun”、日が昇る国です。日本をもう一度、力強い「ライジングサン」の国にします。白地に赤い日の丸を、日本人である私たち一人ひとりが、健やかな誇りと静かな自信と共に見上げることができますように。そして、世界の方々も日の丸を見るたびに、「美しいな、いいな、なんとなく頼もしいな」そう思ってくれますように。
私は、命がけで働いてまいります。そして、国の究極の使命を果たします。
国民の皆様の生命と財産を守り抜く。領土、領海、領空、資源を守り抜く。そして、国家の主権と名誉を守り抜く。
そのために私は政治家になりました。そのために生まれてまいりました。
長時間になりましたが、ご清聴、誠にありがとうございました。
コメント