分析:日本保守党の対・自公政権戦略 —「本来の保守」への回帰を掲げる挑戦者
日本保守党は、自民党・公明党連立政権に対する明確な対立軸を打ち出すことで、既存の保守層や政治不信を抱く有権者への浸透を図っている。その主張の根底には、「自民党はリベラル化し、公明党との連立によって本来の保守の理念を失った」という強い批判意識が存在する。
以下では、主要な政策分野における日本保守党の主張を、自公政権の政策と比較・分析する。
1. 経済政策:「小さな政府」による減税 vs. 「大きな政府」的な給付
経済政策において、両者のアプローチは「小さな政府」か「大きな政府」かという根本的な思想の違いとして現れている。
- 自民党・公明党の政策:近年の物価高騰に対し、自公政権は主に給付金や定額減税といった一時的な家計支援策を打ち出してきた 1。これは、国民生活への配慮を示す一方で、財政規律も意識した場当たり的な対応とも言える。「成長と分配の好循環」を掲げ、持続的な賃上げを目指すものの 1、恒久的な大型減税には慎重な姿勢を崩していない。
- 日本保守党の主張と批判:日本保守党は、自公政権のこうした給付金中心の政策を批判し、経済を根本から活性化させるための恒久的な減税を政策の柱に据えている 5。
- 消費税: 食料品(酒類含む)の消費税率を恒久的にゼロにする 5。
- 所得税・地方税: 働き控えを生む「年収の壁」の解消や各種控除額の引き上げによる所得税減税、および地方税減税を推進する 7。
- ガソリン税: ガソリン税の減税を明記している 5。
2. 移民政策:国益を重視した厳格化 vs. 経済合理性に基づく拡大
外国人労働者の受け入れを巡るスタンスは、国家観の違いを浮き彫りにしている。
- 自民党・公明党の政策:深刻な人手不足を背景に、政府は在留期間の上限がなく家族帯同も可能な「特定技能2号」の対象分野を大幅に拡大した 8。これは、建前上は「移民政策ではない」としつつも、事実上、外国人労働者の受け入れを大きく拡大し、定住へと道を開く政策である。
- 日本保守党の主張と批判:日本保守党は、この自公政権の方針を「国益を損なう」ものとして厳しく批判し、移民政策の全面的な是正を要求している 5。
- 特定技能2号の見直し: 拡大方針と家族帯同を許す政府方針を明確に見直すとしている 5。
- 入管法の厳格化: 入管難民法の改正と運用の厳正化を掲げる 5。
- 社会保障の分離: 外国人の健康保険や年金を日本人とは別の制度にする法改正を主張する 5。
3. 社会政策(LGBT理解増進法):伝統的価値観の擁護 vs. 国際社会への配慮
性の多様性を巡る法整備では、伝統的な価値観と国際的な潮流との間で両者の立ち位置が明確に分かれる。
- 自民党・公明党の政策:G7議長国として国際社会からの圧力も受ける中、自公政権は野党との協議を経て「LGBT理解増進法」を成立させた 10。特に公明党は、多様性を認め合う社会の実現を掲げ、法案成立に積極的な役割を果たした 12。ただし、法案はあくまで「理解増進」を目的とし、「差別禁止」には踏み込んでいない点で、自民党内の保守派に配慮した妥協の産物でもある 14。
- 日本保守党の主張と批判:日本保守党は、この法律自体を問題視し、特に児童への教育に関する条文の削除を求めて改正を主張している 5。これは、同法が学校教育の場で特定の価値観を助長し、伝統的な家族観や道徳観を揺るがしかねないという強い懸念の表れである。自民党が本来守るべき一線を越え、リベラルな価値観に譲歩したことへの不満を持つ層の受け皿となっている。
4. エネルギー政策:脱・再エネ依存と国富防衛 vs. GX(グリーン・トランスフォーメーション)推進
エネルギー政策では、脱炭素へのアプローチとエネルギー安全保障の優先順位について、根本的な見解の相違がある。
- 自民党・公明党の政策:政府・与党は「GX(グリーン・トランスフォーメーション)」を国家戦略として掲げ、再生可能エネルギーの主力電源化と、安全性が確認された原子力の最大限の活用(次世代革新炉の開発を含む)を両輪で進める方針である 16。この政策は、再生可能エネルギー賦課金による国民負担を前提としている。
- 日本保守党の主張と批判:日本保守党は、自公政権の進める「過度な再エネ依存」に明確に反対している 5。
- 再エネ賦課金の廃止: 国民負担を増大させる賦課金を廃止する 5。
- 火力発電の有効活用: 日本が世界に誇る優れたクリーンな火力発電技術を有効活用すべきだと主張する 5。
- 外国資本の排除: エネルギー分野への外国資本の参入を禁止する法整備を掲げる 5。
- EV補助金の廃止: 日本の基幹産業である自動車産業に不利益をもたらすとして、電気自動車への補助金廃止を訴える 5。
結論:自民党の「右側」を狙う明確なポジショニング
日本保守党は、経済、移民、社会、エネルギーといった主要政策のほぼ全てにおいて、自民党・公明党政権よりも明確に右派的、かつ国家主義的な立場を取っている。その政策は、自公政権の政策決定が、連立相手の公明党への配慮や国際社会への体面、経済界の要請など、様々な要因による「妥協の産物」であると見なし、それに対して「本来あるべき保守の姿」を提示する形で構成されている。これにより、現政権に飽き足らない保守層に対して、強力な選択肢として自らを位置づける戦略を鮮明にしている。
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