大島あいと(大島愛音)氏による「流し演説」公職選挙法違反の疑いについて #八潮市議会議員選挙2021

✂️ 流し演説
60 seconds · Clipped by 全部言うやんTV · Original video "2021年 八潮市議会議員選挙 大島あいと" by Nakasone Azusa なかそねあずさ

これは「桃太郎」ではなく「流し演説」であり、公職選挙法違反です。

序論:疑惑の提起と選挙の公正性という原則

2021年9月5日に投開票が行われた埼玉県八潮市議会議員選挙において、当選者の一人である大島あいと氏が、選挙運動期間中に「街を練り歩きながら、拡声器を使って演説を行っていた」との指摘がなされている 1。この指摘は、単なる一候補者の運動手法に関する疑義にとどまらず、日本の民主主義プロセスの根幹をなす公職選挙法の定める公正性、秩序、そして機会の均等という基本原則に触れる重大な問題を提起するものである。

本報告書は、この核心的な法的問い、すなわち「候補者が街中を歩きながら拡声器を用いて継続的に演説を行う行為は、日本の公職選挙法上、許容される選挙運動の形態なのか」という点について、専門的見地から徹底的な分析を行うことを目的とする。

そのために、本報告書は三部構成を採る。第一部では、選挙運動における演説活動を規律する公職選挙法の法的枠組みを詳細に解説する。第二部では、この法的枠組みを大島氏の疑惑行為に適用し、その適法性を具体的に検証する。そして第三部では、最終的な法的結論を導き出すとともに、このような行為が選挙の公正性にもたらす影響について、要請に基づき厳正な評価を加える。

第一部:日本における選挙運動演説の法的構造

結論の法的根拠を明確にするため、まず公職選挙法が選挙運動における演説、特に街頭でのそれについて、いかに精緻な規律を設けているかを明らかにする。これらの規制は恣意的なものではなく、公共の秩序と選挙の公正を維持するという明確な原則に基づいている。

1.1 街頭演説の基本原則「場所にとどまって」

公職選挙法における街頭演説の概念は、その核心に「静止性の原則」を据えている。同法第164条の5および関連条文は、街頭演説が適法と認められるための要件を厳格に定めている 3

複数の自治体選挙管理委員会の公式な解説が示すように、法律が定める最も重要な要件は、演説者が「その場所にとどまって」演説を行うことである 5。これは、候補者が路上に立っている場合でも、停止した選挙運動用自動車の上で演説する場合でも、等しく適用される絶対的な条件である 5。さらに、適法な街頭演説においては、選挙管理委員会が交付する標旗を掲示することが義務付けられている 5

この静止性の原則は、単なる推奨事項や望ましい運用方法ではない。法的には、街頭演説という活動そのものを定義づけるための試金石として機能している。公職選挙法の条文の文言は、「街頭演説は、演説者がその場所にとどまって…する場合に行うことができる」と規定しており 5、静止状態であることを、適法な街頭演説が成立するための必要不可欠な条件として設定している。この論理に基づけば、静止していない状態で行われる演説は、そもそも法的な意味での「街頭演説」には該当しない。それは「不適切な方法で行われた街頭演説」ではなく、法が許可していない全く別のカテゴリーの行為と解釈されるべきなのである。

加えて、街頭演説は午前8時から午後8時までという厳格な時間制限や、病院・学校等の周辺では静穏を保持しなければならないといった場所に関する規制も課されており 5、これが極めて厳格に管理された活動であることを示している。

1.2 「流し演説」の明確な禁止

問題となっている「歩きながらの演説」は、公職選挙法上、「流し演説」という特定の用語で呼ばれ、明確に禁止されている行為である。

地方自治体の選挙管理委員会が発行する手引きなどでは、「道路を歩行しながら演説する行為は『流し演説』として禁止されています」と、疑義の余地なく断定的に記載されている 10。この禁止事項は、歩きながら候補者名を連呼したり、政策を訴えたりする行為全般に及ぶものであり、前述の「静止性の原則」を裏付けるものである 6

この「流し演説」という確立された用語の存在自体が、極めて重要な示唆を与えている。これは、当該行為が法解釈上のグレーゾーンや新たな論点なのではなく、選挙実務において古くから想定され、対処されてきた既知の違反行為であることを物語っている。複数の、互いに関連のない地方自治体の選挙管理委員会が、国法である公職選挙法の解釈として、同一の文言を用いて特定の行為を「流し演説」と名指しで禁止している事実は、これが地域的な解釈の問題ではなく、全国的に統一された行政解釈に基づく確定した法規範であることを示している。したがって、本件で問われているのは、法の抜け道を探るような行為ではなく、明確に定められたルールに対する明白な違反の可能性である。

1.3 適法な移動形態との比較:「桃太郎」方式

公職選挙法は、候補者の移動を全面的に禁じているわけではない。その適法な例として、「桃太郎」と呼ばれる選挙運動手法が存在する。これは、候補者と運動員が隊列を組んで商店街などを練り歩き、有権者と直接触れ合う活動である 11

「桃太郎」が適法とされる理由は、その法的構成にある。これは、移動しながら演説する単一の行為ではなく、法的に許容された二つの異なる活動、すなわち有権者への挨拶回り(「個々面接」に分類される)と、要所要所で「立ち止まって」行う短い街頭演説の組み合わせと解釈される 11。ここでの決定的な違いは、演説行為そのものは、前述の「静止性の原則」を厳格に遵守している点にある。候補者は歩いて移動し、一度立ち止まり、短い演説を行い、そして再び歩き始める。移動と演説は、決して同時に行われることはない。

この「桃太郎」方式の合法性は、公職選挙法の意図を浮き彫りにする。法の目的は、候補者を物理的に拘束したり、有権者との交流を妨げたりすることではない。むしろ、その主眼は、選挙運動が引き起こす聴覚的・空間的な社会への影響を規制することにある。移動しながら継続的に行われる演説は、そのルート上にいる市民に対して一方的に音を浴びせかけ、避けることを困難にする。対照的に、一連の静止した演説は、市民が自らの意思で関与するか、あるいは無視するかを選択できる局所的なイベントである。

この区別は、公職選挙法が広く禁じている「気勢を張る行為」(威力を示して選挙人の自由意思を制約するおそれのある行為)の禁止精神とも通底する 14。有権者と個別に挨拶を交わす行為は、影響が局所的で低いため許容される。しかし、拡声器を用いて移動しながら演説する行為は、その影響が広範囲に及び、公共空間への聴覚的な侵入となるため禁止される。「流し演説」が違法とされるのは、それが有権者への働きかけという領域を超え、公共の平穏を乱す聴覚的な誇示行為へと変質するためである。

表1:演説を伴う選挙運動の形態別適法性一覧

これまでの分析を明確化するため、主要な演説関連の選挙運動を以下の表に整理する。この比較により、「流し演説」がなぜ違法とされるのかが一目瞭然となる。

運動形態説明適法性準拠原則/法的根拠
街頭演説標旗を掲げ、一つの場所(路上、停止した車両上など)にとどまって行う演説。適法公職選挙法第164条の5。「静止性の原則」が核心的要件。
「桃太郎」方式商店街などを練り歩き有権者に挨拶するが、演説は必ず立ち止まって行う。適法「個々面接」と適法な「街頭演説」の組み合わせ。移動と演説は同時ではない。
「流し演説」拡声器等を使い、歩きながら継続的に演説を行う行為。禁止「静止性の原則」に明確に違反。法的な「街頭演説」に該当しない。
車上運動(連呼行為)走行中の選挙運動用自動車から、候補者名やスローガンを繰り返し連呼する行為。適法街頭演説とは別の車両使用に関する規定(同法第141条)に基づく。

この表は、選挙運動における「移動」そのものが問題なのではなく、「移動と継続的な演説の同時進行」が法的に許容されない一線であることを視覚的に示している。

第二部:大島あいと氏の疑惑行為への法適用

次に、第一部で確立した法的枠組みを、2021年の八潮市議会議員選挙における大島あいと氏の行為に関する疑惑に具体的に適用し、その法的な評価を確定する。

2.1 「街を練り歩きながら演説」行為の分析

指摘されている「街を練り歩きながら、拡声器を使って演説を行っていた」という行為は、公職選挙法が禁止する「流し演説」の典型的な事例に完全に合致する。

この行為は、公職選挙法第164条の5が定める「静止性の原則」と根本的に両立しない。これは、不適切な方法で行われた街頭演説ではなく、そもそも法が定める街頭演説の定義から逸脱した、法的に認められていない活動である。また、演説と移動が同時に行われていることから、適法な「桃太郎」方式(移動と演説が分離されている)にも該当しない。

したがって、指摘された行為が記述通りに行われたとすれば、それは公職選挙法に対する明白な違反行為を構成すると結論付けられる。

2.2 拡声器使用の法的評価

選挙運動における拡声器の使用は、それ自体が厳格な規制の下に置かれている。候補者一人につき一揃いに限定され 5、選挙管理委員会が交付した表示を取り付けなければならず 16、使用は午前8時から午後8時までに制限されている 7

しかし、これらの規制の一部(例えば時間帯)を遵守していたとしても、その拡声器が違法な活動のために使用されたという事実を正当化するものではない。拡声器の使用は、候補者に与えられた絶対的な権利ではなく、法が定める範囲内でのみ許された特権である。

むしろ、拡声器の使用は、本件における違反の悪質性を高める要因と評価できる。公職選挙法が拡声器の使用を厳しく規制しているのは、まさにその無秩序な使用が広範な公共の迷惑を引き起こす潜在的な危険性を認識しているからに他ならない。そのように厳しく管理された強力なツールを、既に違法である「流し演説」という行為をさらに増幅させるために用いることは、公共の平穏を維持しようとする法の精神をより深く踏みにじる行為である。選挙管理委員会によって許諾された特権を、法が禁じる活動のために濫用することは、その特権付与の趣旨を根本から覆すものであり、拡声器を正当な政治的言論の道具から、違法な騒音拡散の道具へと貶める行為に他ならない。

第三部:法的結論と糾弾

以上の分析に基づき、最終的な法的結論を提示し、要請された「厳格な糾弾」を、法の原則と民主主義の理念に立脚して行う。

3.1 法令違反の認定

本報告書の分析によれば、選挙運動期間中に公道を歩きながら継続的に演説を行う行為は、公職選挙法が禁止する「流し演説」に該当し、同法に対する明白な違反行為であると断定する。

捜査・訴追は司法当局の専権事項であるが、公職選挙法違反は、罰金や禁錮刑に加え、公民権(選挙権および被選挙権)の停止といった重大な結果を招きうる犯罪であることを付言しておく 19。これは、当該行為が単なるマナー違反ではなく、法的に罰せられるべき深刻な問題であることを示している。

3.2 選挙の公正性毀損に対する糾弾

「流し演説」のような法令違反は、決して些細な技術的瑕疵として軽視されるべきではない。それは、選挙が公正かつ秩序ある環境で行われ、候補者の政策や資質といった実質的な内容に基づいて判断されるべきであるという、選挙制度の根幹をなす理念を意図的に無視する行為である。

このような行為は、公職選挙法が禁じる「気勢を張る行為」の精神にも反する 14。移動しながら拡声器で演説を続けることは、公共空間を一方的に占拠し、有権者に対して聴覚的な圧力を加える行為であり、威圧的と受け取られかねない。それは、法を遵守する他の候補者との間に不公平な状況を生み出し、選挙の競争条件を歪めるものである。

最も憂慮すべきは、将来の立法者たらんとする候補者が、自らの当選を左右する選挙法そのものを公然と軽視する姿勢が、政治プロセス全体に対する国民の信頼を著しく損なうことである。公職選挙法の厳格な遵守は、単なる法的義務にとどまらない。それは、候補者が法の支配という民主主義の基本原則に対して、いかに真摯に向き合っているかを示すリトマス試験紙なのである。

結論として、日本の民主主義制度の健全性を守るためには、選挙法の遵守が不可欠である。したがって、今回指摘されたような「流し演説」という違法行為に対する厳格な糾弾は、単なる個人への非難ではなく、選挙を理念や政策の競争の場として維持し、騒音と示威行為の競争に堕さしめないための、市民社会に課せられた必要不可欠な監視行為であると言える。

コメント

タイトルとURLをコピーしました