河野太郎氏の主張「外国人による健康保険の利用をやめても医療費問題の根本的な解決にはならない」について検証

河野太郎議員の発言は、日本の医療保険制度における外国人加入者の現状と課題を詳細に述べています。以下、主なポイントを整理し、その妥当性を検証します。

河野太郎議員の主張の妥当性

1. 外国人の国民健康保険加入状況

河野議員は、滞在期間が3か月以上の中長期在留外国人は、他の医療保険に加入していない場合、国民健康保険(国保)に加入すると述べています。2024年のデータによれば、国保の被保険者数は2,508万人で、そのうち外国人は92万人(3.6%)を占めています。この数字は、総務省や厚生労働省の統計と一致しており、発言は正確です。

2. 外国人被保険者の医療費負担

外国人被保険者の医療費は1,250億円で、国保全体の医療費9兆8,871億円の約1.4%を占めています。また、国保加入者1人あたりの年間医療費は、日本人が37万円に対し、外国人は13万円とされています。これは、外国人被保険者の平均年齢が低いためと考えられ、国保財政にとってプラスの効果がある可能性があります。これらのデータも公的統計と整合性があり、発言は妥当です。

3. 保険制度の悪用防止策

河野議員は、在留カードとマイナンバーカードの一体化や、在留外国人へのマイナンバーカード保険証の義務化により、なりすましなどの保険悪用を防止できると述べています。この提案は、政府が進めるデジタル化政策の一環として検討されており、現実的な対策といえます。

4. 医療目的の来日と短期滞在者の対応

病気を抱えた上で来日し、国保に加入して治療を受けるケースや、短期滞在者による医療費未払い問題についても言及しています。短期滞在者には民間医療保険の加入義務化が検討されており、これらの対策は医療制度の持続可能性を高めるために重要です。

5. 外国人による医療費問題の影響

「外国人による健康保険の利用をやめれば我が国の医療費問題は解決する」という意見に対し、河野議員は、外国人の医療費割合が全体の1.4%弱であることから、これを全て削減しても医療費問題の根本的な解決にはならないと指摘しています。この見解はデータに基づいており、妥当といえます。

結論

河野太郎議員の発言は、最新の公的データや政府の政策動向と一致しており、全体として妥当性が高いと評価できます。外国人被保険者の医療費負担は相対的に低く、保険制度の悪用防止や医療費未払い対策など、具体的な課題に対する提案も現実的です。医療費問題の解決には、外国人の保険利用だけでなく、医療制度全体の改革が必要であることを示唆しています。

河野太郎氏の主張(原文)

日本に滞在三か月以上の中長期在留外国人は、健保や協会けんぽに加入していなければ、国民健康保険に加入します。

国民健康保険に加入している外国人は、92万人、被保険者の3.6%ですが、外国人の医療費は合計で1250億円と全体の1.4%弱、国民健康保険に加入している日本人の平均年齢に比べて国民健康保険に加入している外国人の平均年齢が低いこと等を考えると、国民健康保険の財政にプラスかもしれません。

今後、在留カードとマイナンバーカードの一体化と在留外国人にマイナンバーカード保険証を義務づけることで、外国人のなりすましによる保険の悪用を防ぐことかできます。

また、病気であることがわかった上で来日し、中長期滞在しながら国民保険に加入して治療を受けることを防ぐことが必要です。
短期滞在の外国人は国民健康保険等には加入できないので、保険財政には影響はありませんが、未収になった医療機関に影響が出ます。

そのため、短期滞在で入国する外国人には民間の医療保険への加入を義務づけが検討されています。

しかし、「外国人による健康保険の利用をやめれば我が国の医療費問題は解決する」というわけではありません。

我が国の医療費をいかに削減するかという問題提起に対して、外国人による健康保険の利用をやめれば医療費問題は解決するんだという意見が複数ありました。

実際のところどうなのでしょうか。

日本国内に住所を有する者は、日本人、外国人を問わず国民健康保険の被保険者となります。

ただし、健保組合など他の医療保険に加入している者、生活保護受給者、短期在留外国人、滞在三か月を超える外国人のうち、外国人富裕層を対象とする「外国人長期滞在制度の対象者」、医療滞在ビザで来日した「医療目的の者」などは適用除外となります。

かつては日本に一年以上滞在する外国人が国民健康保険の対象でしたが、平成の法改正で滞在三か月以上の中長期在留外国人が対象となりました。

2024年のデータをみると、国民健康保険の被保険者数は2,508万人、そのうち92万人が外国人で、割合でいうと3.6%になります。

ではその外国人はどの程度医療費を使っているのでしょうか。

2022年3月から2023年2月までの診療分

合計
うち外国人
割合

レセプト件数
3億6655万件
586万件
1.60%

総医療費
9兆871億円
1250億円
1.38%

高額療養費該当件数
9,361,797件
95,206件
1.02%

高額療養費支給額   
9,606億円
111億円
1.15%

さらにレセプト1件あたり80万円を超える高額レセプトをみると

合計
うち外国人
割合

件数
1,690,636件
19,000件    
1.12%

総医療費    
2兆4292億円
285億円
1.17%

外国人の医療費は合計で1250億円と全体の1.4%弱で、仮にこれが全てなくなったとしても医療費の改善にはほど遠いのが現実です。

外国人が被保険者数に占める割合と比べて医療費の割合が小さくなっていること、国民健康保険に加入している日本人の平均年齢に比べて国民健康保険に加入している外国人の平均年齢が低いこと、さらに国民健康保険に加入している日本人の1人あたり医療費が37万円に対して、外国人は1人あたり13万円であることから、国民健康保険財政にプラスの効果があるのかもしれません。

外国人の被扶養者は、日本国内に居住していることが条件になるため、基本的に家族として在留資格を得ることができる配偶者と子どもに限られます。

「外国人に保険医療を受けさせるな」では問題は解決しませんし、問題から目をそらすことになるだけです。

また、外国人被保険者が、資格取得から一年以内に以下の場合に該当(A)し、さらに在留資格の本来活動を行なっていない可能性があると考えられる場合(B)、市町村から地方入国管理局に通知が行きます。

(A)
国民健康保険限度額適用認定証の交付申請を行なった場合

高額療養費の支給申請を行なった場合

海外療養費の支給申請を行なった場合

出産育児一時金の支給申請を行なった場合

その他医療を受ける目的で在留していることが特に疑われる場合
(B)
地方入国管理局に提出された書類が偽造だと判明した

同一の住所に別世帯の多数の外国人が住民登録している

在留資格が「留学」であるにもかかわらず通学していない

在留資格が「技術・人文知識・国際業務」「技能」等であるにもかかわらず就労していない又は単純作業に従事している

在留資格が「管理・経営」の経営者であるにもかかわらず給与所得がある又は税申告がある

在留資格が「管理・経営」の経営者であるにもかかわらず経営するとされる会社が事業運営していない

在留資格が「家族滞在」「日本人の配偶者」等であるにもかかわらず家族と別居している

在留資格が「家族滞在」「日本人の配偶者」等である者が配偶者と離婚している

2019年から34件が対象となり、地方入国管理局は在留資格取り消し事由に該当していると判断した場合、在留資格を取り消し、市町村は国保の資格を消除し、給付費の返還を請求します。

残念ながらこうした悪用をすべて発見できているかどうかはわかりません。

今後、在留カードとマイナンバーカードの一体化と在留外国人にマイナンバーカード保険証を義務づけることで、外国人のなりすましによる保険の悪用を防ぐことかできます。

また、病気であることがわかった上で来日し、中長期滞在しながら国民健康保険に加入して治療を受けることを防ぐことが必要です。

また、医療保険の問題ではありませんが、医療機関を受診した訪日外国人の支払い実績を2023年9月1日から9月30日の一か月間、調べています。

この期間に医療渡航を除き、観光などの目的で来日した外国人のうち、医療機関を受診したのは延べ3142人で、未収金が60,072,741円ありました。

内訳は、外来が51人、1,919,643円、入院が31人、58,153,098円。

この他に、自由診療の医療を受けることを目的に訪日した外国人は1123人、未収金になったのは全て外来の延べ6人で、7,450,336円。

医療渡航の場合、癌治療などの高度医療を受けているため、1人あたりの金額は大きくなります。

短期滞在の外国人の場合、国民健康保険等には加入できないので、保険財政には影響はありませんが、未収になった医療機関に影響が出ます。

これを防ぐために、短期滞在で入国する外国人には民間の医療保険への加入を義務づけることが、現在、検討されています。

外国人の保険診療に目をそらさず、日本の医療費の問題をしっかり議論することが必要です。

高額療養費制度の悪用問題の関連性

外国人による不正利用問題は依然として未解決

河野氏は、外国人の 国保加入者数が少なく、平均医療費も日本人より低い ため、外国人が保険制度を利用すること自体が財政負担の大きな要因ではないと述べています。しかし、これは 一般的な外国人の医療利用のデータに基づく分析 であり、高額療養費制度の悪用の問題とは切り離されています。

一方で、 「外国人の高額療養費制度の悪用は、日本の医療制度の公平性や持続可能性にとって深刻な問題」 であることは、厚生労働省や自治体の調査からも明らかです。河野氏の発言は、 外国人全体の医療費が財政負担の大きな要因ではない という点を強調していますが、 一部の外国人による不正利用の問題 には十分に言及されていないとも言えます。

改善策と今後の課題

河野氏も指摘しているように、 在留カードとマイナンバーカードの一体化 は、なりすましや資格偽装を防ぐために有効な対策です。また、厚生労働省は 「医療を目的とした在留」 を防ぐために、以下のような対応を進めています。

  • 在留資格と医療制度の連携強化
    在留資格を厳格化し、「経営者」や「留学生」「技能実習生」として来日した外国人が 実際に本来の活動をしているかどうかを定期的に確認 する。
  • 高額療養費制度の見直し
    加入期間の要件 を設け、一定期間以上保険料を納めていない外国人が高額療養費の対象とならないようにする(例:最低6カ月~1年の加入期間を義務化)。
  • 短期滞在外国人の民間保険義務化
    河野氏も言及している 短期滞在外国人に対する民間医療保険の義務化 は、日本の医療機関の未収金問題を解決する重要なステップとなる。

結論

  • 河野太郎氏の主張は、 「外国人全体が医療財政に過度な負担をかけているわけではない」という観点では妥当 ですが、 「高額療養費制度の悪用」 という視点では不十分と言えます。
  • 外国人による医療制度の悪用は、財政負担の問題よりも 制度の公平性や持続可能性を損なうリスク があります。したがって、 外国人の国保加入を制限するのではなく、高額療養費の適用基準を厳格化し、適正な医療利用を促す ことが重要です。
  • また、在留カードとマイナンバーカードの一体化や、在留資格の厳格化によって 「なりすまし」や「不正加入」のリスクを減らす」 ことも、今後の医療制度改革の焦点となるでしょう。

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