📊 事実
持続可能な森林管理の現状と目的
- 我が国の森林は、多種多様な生物が生育・生息し、一部は厳格に保護・管理され、それ以外では継続的に保全管理・利用されている ソース1 。
- 森林生態系は、木材等の資材、良質な水、大気中の酸素供給、気候安定といった恩恵をもたらしている ソース1 。
- 近年、戦後造成された人工林資源が利用可能な段階を迎え、林業生産活動が活発化している ソース1 。
- 利用の縮小により特有の生物多様性が損なわれつつある里山林においても、人による働き掛けを強める取組が始まっている ソース1 。
- 全ての森林は、豊かな生物多様性を支える重要な構成要素であるとの認識がある ソース1 。
- 原生的な天然林は引き続き保護・管理が、人工林のうち林業に適した森林では森林資源の循環利用促進が、条件が厳しい森林では侵入広葉樹を残しながら針広混交林等への誘導が求められている ソース1 。
持続可能な森林管理を支える政策と社会動向
- 「森林の生物多様性を高めるための林業経営の指針」に基づき、持続的な林業経営が行われることが重要である ソース1 。
- 森林・林業基本計画においては、森林を適正に管理して、林業・木材産業の持続性を高めることが掲げられている ソース1 。
- 近年、持続可能な開発目標(SDGs)の認知度が向上し、ESG投資が拡大するなど、消費者を含めた社会全体に環境意識が浸透しつつある ソース2 。
- 建築物への木材利用による地球温暖化防止への貢献に対する期待が高まっている ソース2 。
- 2023年9月のTNFD提言等の動きを受け、民間企業は自らの自然資本への依存度を評価し、生物多様性保全や持続可能な木材利用に配慮した原材料調達が求められている ソース2 。
- 企業が「気候変動」や「生物多様性」の課題への対応として、建築物の木質化や国産材の活用に取り組んでいることを情報開示する例がある ソース2 。
- 林野庁は令和6(2024)年3月に「建築物への木材利用に係る評価ガイダンス」を作成・公表し、評価項目としてデュー・デリジェンスの実施による「持続可能な木材の調達」を挙げている ソース2 。
- ガイダンスでは、利用する木材について合法性と森林の伐採後の更新の担保を確認できること、または森林認証制度に基づき認証・評価されたものであることが評価方法として提示されている ソース2 。
- 「建築物への木材利用に係る評価ガイダンス」では、持続可能な木材の調達に関する評価にクリーンウッド法を活用できることとしている ソース2 。
- 森林経営計画において生物多様性に関連する取組事項を示すことが、木材の流通過程で情報を伝達する有効な手段となる ソース2 。
- 環境省は2023年3月に「持続可能な地域づくりのための生態系を活用した防災・減災(Eco-DRR)の手引き」を公表し、全国規模のベースマップを基に自治体等による計画策定への技術的な支援を進めた ソース3 。
- 「自然を活用した解決策(NbS)」は、気候変動や生物多様性、社会経済の発展、防災・減災、食糧問題など複数の社会課題の同時解決を目指す考え方である ソース3 。
- 令和7年版 環境・循環型社会・生物多様性白書では、昆明・モントリオール生物多様性枠組及び生物多様性国家戦略2023-2030の実施、生物多様性保全と持続可能な利用の観点からの国土の保全管理、Eco-DRR等のNbSの推進が示されている ソース4 。
経済的側面と課題
- 生物多様性を高める林業経営が持続的に行われるためには、そこから生産される木材が需要者に評価され、利用されることが重要である ソース2 。
- 林業事業体が持続的な経営を実現するためには、主伐後の再造林や保育に係る経費を賄えるだけの木材販売収入が必要である ソース2 。
- 川上から川下までの事業者が再造林等の費用を織り込んだ水準で木材の取引価格を設定する例が見られる ソース2 。
- 木材を利用することが社会的に評価され、木材を介した経済的な循環が促進されることが不可欠である ソース1 。
- 生物多様性の観点も含めて持続的な経営が行われている森林から生産される木材が需要者に評価され、その利用が拡大することは山元の利益の確保や伐採後の再造林等につながる ソース2 。
- 平成31年3月に成立した森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律に基づき、令和元年度から都道府県と市町村に森林環境譲与税が譲与されている ソース5 。
- 森林環境譲与税は市町村による森林整備の財源であるが、令和元年度から3年度に県内市町村に譲与された約18.9億円のうち64%(12.1億円)が基金に積み立てられ、特に都市部の市町分が80%を占めている。これは都市部の市町で使い方が分からないことが理由と考えられている ソース5 。
- 国が決めた案分率の基準の問題から、森林が多い小規模自治体から制度の見直し要望が出ている ソース5 。
💡 分析・洞察
持続可能な森林管理は、生物多様性の保全や気候変動対策といった環境的価値の提供だけでなく、林業・木材産業の経済的持続性を確保する上で極めて重要であると言える。特に、戦後造成された人工林資源が利用可能な段階を迎えている現状は、林業生産活動を活発化させる好機であり、これを持続可能な木材利用へと繋げることが求められている。
社会全体でSDGsやESG投資への関心が高まり、TNFD提言によって企業が自然資本への依存度を評価する動きが加速していることは、持続可能な森林管理から生産される木材の市場価値を高める要因となっている。林野庁による「建築物への木材利用に係る評価ガイダンス」の策定やクリーンウッド法の活用推進は、合法性と持続可能性が担保された木材の調達を促し、国産材への転換を後押しすることで、林業の経済循環を強化する効果が期待される。
また、環境省が推進するEco-DRRやNbSといった取り組みは、森林が持つ多面的な機能、特に防災・減災や社会経済発展への貢献を再認識させ、森林管理の重要性をより広範な社会課題解決の文脈で位置づけている。これにより、森林管理が単なる林業の枠を超え、国土全体の持続可能性に不可欠な要素として認識されつつある。
⚠️ 課題・リスク
現状から、持続可能な森林管理を推進する上でのいくつかの課題とリスクが懸念される。
第一に、森林環境譲与税が市町村の森林整備の財源として導入されているにもかかわらず、都市部の市町でその活用が進まず基金に積み立てられている状況は、必要な森林整備が滞るリスクを抱えている。これは、財源があっても具体的な活用方法やノウハウの不足、あるいは都市部と山間部の連携不足が原因である可能性が高い。
第二に、林業事業体が持続的な経営を行うためには、木材販売収入が再造林や保育の経費を賄える水準にあることが不可欠である。市場において持続可能な木材の価値が十分に評価され、適切な取引価格が設定されない場合、再造林の放棄や森林管理の質の低下に繋がり、長期的な森林資源の枯渇や生物多様性の損失を招く可能性がある。
第三に、森林・林業・木材産業関係者だけでなく、木材需要者や消費者を含む関係者全体の森林の保続と生物多様性の重要性に対する理解不足は、持続可能な森林管理の取り組みを社会全体で支える上での大きな障壁となる。この理解が深まらない限り、政策や市場メカニズムの効果が限定的になるリスクがある。
主な情報源: 環境省 / 埼玉県議会(議事録) / 林野庁

コメント