環境白書における生物多様性の保護の重要性

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🎯 質問の解釈

  • 環境白書や森林・林業白書等の公的報告書に基づいた、生物多様性保護の現状と重要性、および具体的な保全施策の展望は何か?

📊 事実

生物多様性の現状と危機の構造

  • 地球上には既知の種だけで約175万種、推定では3,000万種の生物が存在し、森林は世界の陸地面積の約3割を占めている ソース1
  • 生物多様性は「生態系」「種」「遺伝子」の3つのレベルで定義されるが、一度損なわれると回復に長い期間を要し、絶滅した種は再生しないという不可逆性を持つ ソース1
  • 「生物多様性国家戦略2023-2030」では、生物多様性の損失要因として、開発・乱獲(第1の危機)、利用の縮小(第2の危機)、外来種・化学物質(第3の危機)、気候変動(第4の危機)の4つを整理している ソース4
  • 2024年時点で、世界の絶滅危惧種数は前年より約2,300種増加し、合計で4万6,337種に達している ソース9

生態系サービスと経済的影響

  • 生物多様性は、食料・木材等の「供給」、気候調整等の「調整」、景観等の「文化」、生息環境等の「生息地」という4つの生態系サービスを通じて人類に恩恵をもたらしている ソース1
  • 経済活動は自然資本という基盤の上に成り立っており、2023年に発生した自然災害による農林水産関係の被害額は1,928億円に上った ソース9
  • 1998年から2017年の20年間における日本の自然災害による経済損失額は3,763億ドルと推計されている ソース9

国内の保全施策と調査体制

  • 2022年12月のCOP15で「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択され、これを受けて2023年3月に「生物多様性国家戦略2023-2030」が策定された ソース10
  • 自然環境保全基礎調査(緑の国勢調査)において、1999年に開始した1/25,000現存植生図の整備が2023年度に完了し、2024年度に全国版が公開される予定である ソース2
  • モニタリングサイト1000」では全国約1,000か所で長期調査が行われており、2024年度には第4期とりまとめ報告書概要版が公表される予定である ソース2
  • 小笠原諸島では外来種アカギの駆除活動が継続されているほか、火山活動で生物相がリセットされた西之島では2021年度から総合学術調査が実施されている ソース1 ソース2

統合的アプローチと新たな手法

  • 第六次環境基本計画では、脱炭素・循環型・ネイチャーポジティブ(自然再興)を統合的に進める「循環共生型社会」の構築を掲げている ソース9
  • 生態系を活用した防災・減災(Eco-DRR)や、社会課題の同時解決を目指す「自然を活用した解決策(NbS)」の推進に向け、2023年3月に手引きが公表された ソース6 ソース7
  • 2024年度には、企業による水資源保全等の取組を経済的に評価する調査が那須塩原市等で実施される予定である ソース2

💡 分析・洞察

  • 自然資本の経済価値化が進んでいる。単なる環境保護の枠を超え、生物多様性を経済基盤(自然資本)と捉え、その損失を経済的リスクとして評価する動きが加速している。
  • 科学的データの基盤整備が成熟期に入っている。2023年度の植生図整備完了や「いきものログ」による535万件超のデータ蓄積により、エビデンスに基づいた精緻な保全計画の策定が可能になっている。
  • 「守る」から「活用する」への転換が見られる。原生林の厳格な保護だけでなく、里山林の適正な利用や、防災・減災に生態系機能を組み込むEco-DRRなど、社会システムの一部として生物多様性を組み込む戦略が主流となっている。
  • 市民・企業の参画が不可欠となっている。「みんなで虫らべ」のような市民参加型調査や、企業の経済評価の試行は、生物多様性の保全を官民一体の運動(主流化)にする狙いがある。

⚠️ 課題・リスク

  • 不可逆的な損失の加速が最大の懸念である。絶滅危惧種の増加や、一度侵入した外来種(アカギ等)の駆除に多大な労力を要する現状から、予防的措置の遅れが致命的な結果を招く恐れがある。
  • 気候変動との相乗悪化のリスクがある。気温上昇によるタケ類の分布北上など、第4の危機(気候変動)が既存の生態系バランスを急速に崩し、従来の保全手法が通用しなくなる可能性がある。
  • 過疎化による管理不足(第2の危機)が深刻である。里山林など、人の働き掛けによって維持されてきた二次的自然環境において、人口減少に伴う管理放棄が生物多様性の低下を招く悪循環に陥っている。
  • 経済的評価の難しさが残る。水資源保全などの価値を経済評価する試みは始まっているが、多面的な生態系サービスの全容を市場価格に反映させる手法はまだ確立途上であり、投資判断の障壁となる可能性がある。

主な情報源: 環境省 / 林野庁 / 国土交通省

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