日本反核法律家協会の「核共有違法論」について反論する

参照先:日本反核法律家協会の「核共有違法論

「核共有違法論」の要点

この論考は、NATOの「核共有(Nuclear Sharing)」が国際法およびドイツ国内法に違反している という立場を示し、ドイツは核共有を終了すべきであると主張しています。以下の5つの主要な論点に整理できます。


1️⃣ 核共有とは何か?

  • 核共有 とは、米国の核兵器をNATO加盟国(ドイツ、ベルギー、イタリアなど)に配備し、戦時には各国の軍が運用する体制を指す。
  • 核兵器の管理権は米国にあり、使用には米国大統領の許可が必要。
  • ドイツ連邦軍はNATOの核戦略に基づき、核兵器使用の訓練を受けている。

2️⃣ 核共有の歴史と運用

  • 米国は1950年代から戦術核をNATO加盟国に配備。ドイツでは現在、ビューヒェル空軍基地にB61核爆弾が配備されている。
  • 核共有は冷戦期の防衛戦略の一環だったが、冷戦終結後も維持されている。
  • ドイツ政府は核共有を継続し、新型戦闘機F-35Aを導入予定。

3️⃣ 核共有の法的問題

  • 核共有は 核不拡散条約(NPT)第1条・第2条 に違反している。
    • NPTは、核兵器国が非核兵器国に核兵器を移譲することを禁止 しているが、核共有はこの規定に反する。
    • ドイツは「非核兵器国」であるにもかかわらず、戦時には核兵器の運用に関与するため、条約違反となる。
  • ドイツ国内法上も問題がある
    • 核兵器の配備について、ドイツ連邦議会は正式な法的手続きを経ていないため、法的根拠が不明確。
    • ドイツ憲法(基本法)第25条に基づく「国際法の一般規則」にも違反する可能性。

4️⃣ 国際法上の核兵器の違法性

  • 国際人道法(ジュネーブ条約) に違反
    • 核兵器は、戦闘員と非戦闘員を区別せず、放射線による被害が長期に及ぶため、国際法で禁止されている。
  • 核兵器の使用・威嚇は「生命に対する権利」を侵害(自由権規約第6条)
    • 国連人権規約によれば、核兵器の威嚇・使用は基本的人権を侵害する行為とされる。

5️⃣ ドイツが核共有をやめるべき理由

  • 軍事的に意味をなさない
    • 現代の核抑止は潜水艦発射型ミサイル(SLBM)が主流であり、ドイツに配備された戦術核は戦略的価値が低下している。
  • NATOの対立を深め、ドイツを戦争に巻き込むリスクがある
    • 核共有はロシアとの緊張を高め、戦争のリスクを増大させる。
  • ドイツは核禁止条約(TPNW)に加盟し、非核兵器国としての立場を明確にすべき
    • ドイツが核共有をやめても、NATO加盟国としての地位は維持できる。
    • 核共有は法的拘束力のある条約ではなく、ドイツ政府の決断で終了可能。

この論考の主張は、NATOの核共有は国際法・国内法に違反し、軍事的な意味も乏しく、戦争のリスクを高めるため、ドイツは速やかに核共有を終了すべきだ というものです。

核抑止の必要性と核共有の正当性

現在の国際情勢は極めて不安定であり、ロシアのウクライナ侵攻、中国の軍事拡張、北朝鮮の核開発 など、安全保障のリスクはかつてないほど高まっています。この状況で 核抑止を否定し、核共有の違法性を主張することは、単なる理想論に過ぎず、現実の安全保障環境を無視した無責任な議論 です。


1️⃣ 核抑止がなければ国際秩序は維持できない

🔹 歴史が証明する「核抑止の有効性」

  • 核兵器が存在するからこそ、大国間の全面戦争は回避されてきた。
    • 冷戦期、米ソが直接軍事衝突しなかったのは、「相互確証破壊(MAD)」が機能したため。
    • 核抑止がなければ、キューバ危機のような事態が核戦争へ発展していた可能性は高い。

🔹 核を持たない国が侵略される現実

  • ウクライナは、核を放棄した結果、ロシアの侵略を許した。
    • 1994年の「ブダペスト覚書」により、ウクライナは核兵器を放棄。
    • しかし、ロシアは2014年にクリミアを併合、2022年にはウクライナ本土へ全面侵攻。
    • 核抑止がない国は、侵略のリスクが高まるという事実を証明した。

🔹 「非核国家であれば攻撃されない」という幻想

  • 中国・ロシア・北朝鮮などの独裁国家は、国際法を無視して領土拡張を進めている。
    • 台湾、南シナ海、尖閣諸島への圧力は年々増加。
    • 「核を持たなければ攻撃されない」という主張は、歴史的にも誤り。

2️⃣ NATOの核共有は国際法違反ではない

🔹 核不拡散条約(NPT)に違反していない

  • NPTの第1条・第2条は、「核兵器の移譲・取得」を禁止しているが、
    NATOの核共有は「有事の際に」核兵器を使用する体制であり、平時には米国の管理下にあるため、NPT違反にはならない。
  • NPT交渉時に、NATOの核共有は問題視されなかった歴史的経緯 がある。
    • 1968年のNPT交渉時、NATOの核共有は既に存在していたが、条約本文には明確な禁止規定が設けられなかった。
    • 国際社会は、NATOの核共有を暗黙の了解として認めている。

🔹 核共有はNATO加盟国の主権に基づく防衛戦略

  • 各国は、自国の防衛政策として自主的に核共有に参加している。
    • これは独立国家としての主権の範囲内であり、他国が介入するべきではない。

3️⃣ 「核兵器は違法である」という主張の誤り

🔹 国際司法裁判所(ICJ)の「核兵器勧告的意見」は決定的な禁止ではない

  • 1996年のICJ意見では、「国家の生存が脅かされた極端な状況では、核兵器の使用は違法とは断定できない」と結論付けている。
  • つまり、「核兵器の使用は絶対に違法」という主張は誤り。

🔹 「ジュネーブ条約違反」という主張の矛盾

  • 核兵器の影響は大きいが、「無差別攻撃」とは限らない。
    • 現代の戦術核は、ピンポイント攻撃が可能な精密誘導システムを備えている。
    • 「無差別攻撃」と決めつけるのは、核兵器の技術進化を無視した古い議論。

🔹 核抑止がない世界はより危険になる

  • 「核兵器を廃絶すれば平和になる」という主張は、理想論に過ぎない。
    • 核兵器がなくなれば、通常兵器による戦争のリスクが高まるだけ。
    • 圧倒的な抑止力があるからこそ、大国間戦争は防がれている。

4️⃣ ドイツが核共有をやめれば、NATOと欧州の安全が崩れる

🔹 ドイツが核共有を放棄すれば、NATOの抑止力が低下

  • 核抑止は「敵国に核攻撃を思いとどまらせる」ためのもの。
    • ドイツが核共有をやめれば、NATOの核戦力が弱まり、ロシアが軍事的挑発を強める可能性が高い。
  • NATOの結束が崩れ、東欧諸国が不安定化する。

🔹 核共有をやめても「核の標的」から外れるわけではない

  • 「核共有をやめれば、核攻撃を受ける可能性が下がる」という主張は誤り。
    • ドイツはNATO加盟国であり、ロシアの戦略目標に含まれている。
    • 核抑止力が低下すれば、むしろ安全保障環境は悪化する。

5️⃣ 結論:「核共有反対論」は現実的でない

🔹 核抑止は歴史的に有効であり、核兵器の廃絶は非現実的。
🔹 NATOの核共有は国際法違反ではなく、各国の主権の範囲内の防衛政策である。
🔹 核兵器がなければ、独裁国家が侵略を強め、世界はより危険になる。
🔹 ドイツが核共有を放棄すれば、NATOの結束が崩れ、欧州の安全保障が脆弱化する。

🔴 結論:「核共有は違法であり不要」という主張は、現実の安全保障環境を無視した理想論であり、国際社会の安定にとって有害である。

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